続いて、宮脇檀さんと吉田あこさんの対談より。
高齢者に優しい住宅の研究を進めるという吉田さんの発言に、「建築家に手すりをつけさせるというのはなかなか大変なことなんです」「手すりを両側に付けるということもなかなかやってくれないんですよ。なぜ両側に必要なのか、と言われるんですね。」「なぜかと言うと、日本人には脳卒中で亡くなる方が非常に多いんですが、脳卒中というのは一方の手足が利かなくなるんです。だから上るときと下りるときで両側に手すりが必要になるわけです。」とありました。
実は、去年、身近な親類がこのような状況で家を建てたのですが、言っておいたにもかかわらず玄関に段差はあるし、廊下は狭いし、という有様で、昨日遊びに行ったのですが、案の定、手すりは片方にしかありませんでした。
これまでの「普通」の家としては別に問題ないわけで、間違いなくプロの方が設計をしているわけですが、身障者のための家という観点からみたとき、この方は十分なノウハウを持っていなかったわけです。
この点について言えば、おそらく今後はこのような配慮をすることが「普通」の家にも求められてくると思いますが、個々の案件では普通になるのを待ってはいられません。
例えば、今はブラウザで入力欄を移動するのはTabキーを打つのが普通でしょう。これが将来Enterキーで移動するのが普通になる可能性はあると思います。でも、明日伝票を左手に持って右手で入力しなければならない人にとっては、それを待ってはいられないかもしれないわけです。これをプロだからといって、「普通はTabキーでの移動ですから、Enterキーで移動するようにしてしまうと、他のページと違和感を感じてしまいますよ」と片づけてしまうのではなく、利用者の声に耳を傾けて、本当の理由を探る必要はあると思うのです。そして、色々な専門に深いノウハウを持つ努力も続けなければいけないなと思います。
(もちろん、何でも利用者の声を聞けばよいわけではないだろうというのはコンポーネントの話に書いたとおりですし、不特定多数の人が使う場合には違和感の問題の方が大きくなるので、ケースバイケースなのは言うまでもありませんね)