僕はある目的のために家を出た。
今日に限って父親は昼近くまで寝ていた。昨日は、いつもの飲み仲間と次の旅行についての打ち合わせをしたらしい。
65にもなって、決して健康でもないのに2時まで飲んでるバイタリティは褒めるべきか、あきれるべきか。
11時半くらいに、そろそろ出かけようと思い、起こしてしまったが、出かけようとしているのを分かるなり、朝食の準備を始め、「食っていけ」と。
子供の頃からそうなのだ。祖母の代からそうなのだ。出かける前には飯を食わせる。飲みに行くと言っても、「飯食っていけ」と言う。
ホームの階段を下りると、ちょうど電車が滑り込んできた。歩きながら、JRで行くか、京成で行くか考えていたのだが、行き先は千葉中央行きだった。昨年から新京成から京成へ直接乗り入れをしており、千葉中央行きならば乗り換えずに行ける。本を読みながら、気づけば幕張本郷に着いていた。
幕張本郷からは、連結バスで海浜幕張駅へ。最初の目的地は、駅裏のガーデンウォーク。近くに住む後輩夫婦に声を掛けないのは申し訳ない気もするのだが、かれらはダイビングに出かけているはずなので仕方がない。
駅から行くとすぐ左手にあるAgnis b.に入る。しかし、アウトレットだろうが高いものは高い。
そもそも、アウトレットというのは、値札に頼らずにそのものの価値を測れる人のためのものだと思う。比べるべき価値基準なくして、高いも安いもないのである。よく分からないものの値段が3万円から2万円になっていても、安いとは思わない。
仮にそれでも何かを買わなければいけないとなったら値札を見て値引率の大きいものを選ぶのであろう。ソフトウェアそのものの価値が分からなければ、値札(人月)で比較するしかない。自分の労働の価値が分からなければ、値札(決まった月給)で満足するしかない。そういうことである。
そんな僕にも、気になる店が一つあった。
MICHEL KLEIN
今日、肩から下げているカバンも、つい先日錦糸町のアルカキットで買ったMK系のものである。
まさにこれだというズボンが5千円以下で売っている。これは間違いなく、僕の価値観とも釣り合っている。目的達成はあっけなく果たされると思った。
実は、先日の錦糸町でも、似たズボンにトライはしていたのである。しかし、全く入らなかった。あと数センチというレベルではなかった。
「このタイプはもものところが細いんですよね」
軽い慰めだったのかもしれないが、確かに自分を慰めることはできた。
そして、今日のズボンは普通のストレートタイプである。当たり前の期待を持った。
しかし、目的は果たされなかった。蛙の子は蛙。MKのズボンはMK。感じた悔しさは、ブランドに対してのものだったか、自分に対してのものだったか。
次の目的地に向かい、快速で1駅移動した先は南船橋。柳原可奈子がモノマネをする総武線の女子高生曰く、「最近のららぽはオニ熱い」らしいのである。
駅からは無料のシャトルバスに乗った。バスを降りた時点では、あの頃の雰囲気もちょっとだけ残っていた気がした。20年以上前のあの頃。中学の1年2年、1月1日はこの辺りをスタート地点とする元旦マラソンで年が明けていたのだ。2年目のときは、今年で終わりだと思ってちょっとほっとした気がする。ららぽーとに抱く印象は、やる気のないそごうがある、それだけだった。
今日1歩入って思い出したのは、お台場のヴィーナスフォート。活気と人口密度はそれ以上だった。 とにかく活気にあふれていた。
ヴィーナスフォートはさすがに一人では行かなかった。
しかし、今日が一人であることに苦痛はなかった。間違いなく苦痛ではなく、十分に楽しかった。
一人でも楽しめると、誰かを誘うという気持ちも薄らぐ。誰も誘わなければ、ずっと一人。
これは負のスパイラル。蟻地獄。そう、蟻地獄。
蟻地獄に落ちた蟻は、もがくから食べられてしまう訳ではない。落ちてしまったから食べられるのである。もがいても助からないだけである。
一人のまま36になってしまった。落ちてしまった。もがいても助からない。
しかし、蟻地獄に落ちても助かる蟻もいる。雨が降って蟻地獄の外に流されるかもしれない。人間様に助けられるかもしれない。奇跡的かもしれないが、あり得ない奇跡ではない。チャンスは来るかもしれないのである。チャンスをつかむのである。チャンスに備えるのである。
もがいて時間を稼げるなら、なるべく長引かせる。そのうち雨が降るかもしれない。
どうもプログラミングが分からない→分からないとつまらない→つまらないから勉強しない→勉強しないと分からない・・・。
あなたにチャンスがもたらされるように僕もがんばる。だからそれまでしがみついていてほしい。
COMME CA ISMで、値段もデザインも納得できるズボンがあった。ズボンなのに表記はS/M/L/XL。XLは86「前後」相当とのことだった。ちょっと嫌な感じはあった。
XLを試着した結果は、先ほどのMKと一緒。
今日はいていたズボンも86なのだが全く別物なのである。肉が入らないというよりは骨が入らないという感触。しかし、こういうズボンをはくために、まずやらなければいけないのは、やはり肉を落とすことからなのであろう。
帰りにIKEAに寄って、カフェでミートボールサンドウィッチ。うまいかまずいかというとまずい。しかし、ドリンク飲み放題のおかげでこんな文章を書いたのである。
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